特集・ハンニバル戦争検証その1
2005年12月4日 コラム学者「さて、再開第一回目は、第二次ポエニ戦争、通称ハンニバル戦争の特集です」
生徒「紀元前の話なのに、何で?」
学者「『歴史ファンの大航海時代』で特集が組まれているからですよ。ハンニバル戦争についての経緯はそこで読んで下さい。」
生徒「ここでは何をするの?」
学者「めけさんの仮説に対して、此方も検証及び仮説を立ててみようと思いまして。」
生徒「ふーん」
学者「ではいきましょう」
検証その1:カンネー会戦後の講和は可能か?
生徒「歴史上名高いカンネーの会戦ね。ハンニバルは数にして2倍近くのローマ軍を撃破、ローマ軍は8万の軍勢中7万を失いハンニバルはろくな被害も出さなかった。」
学者「めけさんはここでの講和を検証しています。」
生徒「講和の条件は
1、第1次ポエニ戦争の賠償金の返還
2、ザグントゥム攻略を不問とする
3、50年間の関係友好
ね。カンネー戦までにもローマはトラメジーノ湖畔などで大軍を失っているし、ローマには渡りに船なんじゃないの?」
学者「結論を言えば、ローマとの講和は不可能です。」
生徒「え、なんで!?」
学者「ローマ側が態度を硬化させてしまったんです。カンネー戦はまともな国家ならば崩壊してもおかしくない程の被害をローマにもたらしました。ローマは緊急事態宣言にも似た雰囲気となり、カルタゴとの一切の交渉を打ち切ってしまいます。ハンニバルがローマに対し、捕虜の買取を要請した時も、にべも無く断ってしまいます。」
生徒「追い詰め過ぎたのね。」
学者「カンネー戦後、ローマは空前絶後の大徴兵を開始します。国家ローマの総力を上げてハンニバルと対決する事を選んだのです。何せ当事は兵士でなかった奴隷までもを兵士として徴用し、資金の足りない分は元老院議員全員が土地以外の全財産を投げ打って、それでも足りない分は国債まで発行して兵士を集めます。募集する兵士が足りなくなって、徴兵限度年齢の引き上げも行いました。こんな状況下ですら、ハンニバルからの捕虜の買取を拒否しました。決してカルタゴ、そしてハンニバルとの交渉はしないという決意の表れでしょう。」
生徒「うわ・・・」
学者「ローマという国家の恐ろしい所は、このローマ人の精神です。まさに『ハンニバルが滅びるか、ローマが滅びるか』の二者択一です。こんな状況下では、ローマとの講和の可能性は残念ながら無いでしょう。」
その2:アルプスを越えない
生徒「ハンニバルがアルプスを越えずに、イベリアと南スペインで戦い続けたらどうか、という可能性ね。」
学者「残念ながら無理でしょうね。理由は二つあります。」
生徒「一つ目は?」
学者「それではハンニバルの目指す『ローマ連合の解体』という目的が達成できません。イタリア内に侵入し、ローマという国に徹底的に圧力をかけて内部崩壊に導く。これがハンニバルの戦略の大前提です。」
生徒「結局成功しなかったじゃない?」
学者「それでもローマに対するダメージはローマ史上類を見ないものでした。ここでローマを徹底的に叩かなければ、カルタゴとローマの国力差は開く一方。極論を言えばハンニバルが死ぬまでローマが粘れば、自動的にローマの勝利が確定してしまうのです。一か八かの賭けでも、ハンニバルはアルプスを越える必要がありました。」
生徒「もう一つの理由は?」
学者「当事のガリアは、ハンニバルの戦術が十全に活かせる地形ではなかったのです。カエサルのガリア戦記によると、当事のガリア(フランス一帯)は森林と沼沢地と河川が縦横無尽に走っていました。こんな地形では、ハンニバル得意の騎兵の機動力が活かせません。ハンニバルが活躍するには、イタリアや北アフリカなどの開発されていた豊かな土地が必要だったのです。」
続きは次回に
生徒「紀元前の話なのに、何で?」
学者「『歴史ファンの大航海時代』で特集が組まれているからですよ。ハンニバル戦争についての経緯はそこで読んで下さい。」
生徒「ここでは何をするの?」
学者「めけさんの仮説に対して、此方も検証及び仮説を立ててみようと思いまして。」
生徒「ふーん」
学者「ではいきましょう」
検証その1:カンネー会戦後の講和は可能か?
生徒「歴史上名高いカンネーの会戦ね。ハンニバルは数にして2倍近くのローマ軍を撃破、ローマ軍は8万の軍勢中7万を失いハンニバルはろくな被害も出さなかった。」
学者「めけさんはここでの講和を検証しています。」
生徒「講和の条件は
1、第1次ポエニ戦争の賠償金の返還
2、ザグントゥム攻略を不問とする
3、50年間の関係友好
ね。カンネー戦までにもローマはトラメジーノ湖畔などで大軍を失っているし、ローマには渡りに船なんじゃないの?」
学者「結論を言えば、ローマとの講和は不可能です。」
生徒「え、なんで!?」
学者「ローマ側が態度を硬化させてしまったんです。カンネー戦はまともな国家ならば崩壊してもおかしくない程の被害をローマにもたらしました。ローマは緊急事態宣言にも似た雰囲気となり、カルタゴとの一切の交渉を打ち切ってしまいます。ハンニバルがローマに対し、捕虜の買取を要請した時も、にべも無く断ってしまいます。」
生徒「追い詰め過ぎたのね。」
学者「カンネー戦後、ローマは空前絶後の大徴兵を開始します。国家ローマの総力を上げてハンニバルと対決する事を選んだのです。何せ当事は兵士でなかった奴隷までもを兵士として徴用し、資金の足りない分は元老院議員全員が土地以外の全財産を投げ打って、それでも足りない分は国債まで発行して兵士を集めます。募集する兵士が足りなくなって、徴兵限度年齢の引き上げも行いました。こんな状況下ですら、ハンニバルからの捕虜の買取を拒否しました。決してカルタゴ、そしてハンニバルとの交渉はしないという決意の表れでしょう。」
生徒「うわ・・・」
学者「ローマという国家の恐ろしい所は、このローマ人の精神です。まさに『ハンニバルが滅びるか、ローマが滅びるか』の二者択一です。こんな状況下では、ローマとの講和の可能性は残念ながら無いでしょう。」
その2:アルプスを越えない
生徒「ハンニバルがアルプスを越えずに、イベリアと南スペインで戦い続けたらどうか、という可能性ね。」
学者「残念ながら無理でしょうね。理由は二つあります。」
生徒「一つ目は?」
学者「それではハンニバルの目指す『ローマ連合の解体』という目的が達成できません。イタリア内に侵入し、ローマという国に徹底的に圧力をかけて内部崩壊に導く。これがハンニバルの戦略の大前提です。」
生徒「結局成功しなかったじゃない?」
学者「それでもローマに対するダメージはローマ史上類を見ないものでした。ここでローマを徹底的に叩かなければ、カルタゴとローマの国力差は開く一方。極論を言えばハンニバルが死ぬまでローマが粘れば、自動的にローマの勝利が確定してしまうのです。一か八かの賭けでも、ハンニバルはアルプスを越える必要がありました。」
生徒「もう一つの理由は?」
学者「当事のガリアは、ハンニバルの戦術が十全に活かせる地形ではなかったのです。カエサルのガリア戦記によると、当事のガリア(フランス一帯)は森林と沼沢地と河川が縦横無尽に走っていました。こんな地形では、ハンニバル得意の騎兵の機動力が活かせません。ハンニバルが活躍するには、イタリアや北アフリカなどの開発されていた豊かな土地が必要だったのです。」
続きは次回に
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